地図上の広告戦略について

地図上に表示される広告についての分析

地図に連動した広告主には、

  • 現在地(観光地)にゆかりのある小店舗
  • 全国展開している店舗

の2種類があります。

目立つ場所にある広告は、圧倒的に後者のみです。そこには、広告料という問題があるためです。

せっかく地元のお店が広告をだしても、人目に触れないので、人々を自分のお店に導くことは難しいです。高い広告スペースを取ろうと思っても、資本力の差があるので太刀打ちできません。

観光地の無名店の方針

このような地元のお店が、全国展開の有名店に対抗する手段として何かないのかと考えました。

弱者の戦略

これは、強者と弱者の戦いとみなすことができます。

  • 強者=有名店
  • 弱者=無名店

強者と弱者の戦いのときに、弱者はどう戦うのでしょうか?そのための戦略はないのでしょうか?

この点について考えました。

これは広告やマーケティングの話ではなく、ビジネス戦略としての話です

ランチェスター戦略

そういったビジネス戦略としては、ランチェスター戦略が存在します。

この戦略が言うことは、

「弱者が勝つためには市場を細分化(セグメント化)しなさい。そして、その細分化した市場の中で1位を取りなさい。これが弱者が勝つ方法です。」

ということです。

距離セグメント

これを観光地の無名なお店が実践するためにはどうすればいいでしょうか?

いろいろと考えました。

その結果、勝つための細分化の切り口として「距離」があると考えました。

極めて単純な話としては、

    • ある人が自分の店に近づいてきました。
    • そのときに、その人に1番近いお店は自分のお店です。

というものです。

この「特定の人への物理的距離」というセグメントでは、自分のお店が1番という状況を作ることは可能です。

「知名度が低いので誰も知らないかもしれません。しかしあなたにとって1番近いレストランは私のお店なんですよ。」

こういう通知をすれば、届く層があると考えています。そしてこれこそが、ランチェスター戦略の言わんとすることです。

距離セグメントの例

観光地では、多くの人は有名店に行こうと思っています。行きたいお店が決まっているかもしれません。

しかし

    • 混雑してて入れないかもしれません。
    • 定休日かもしれません。
    • 道に迷って歩き回ったので、とにかくどっかで休みたいと思っているのかもしれません。
    • 急に雨が降ってきたからお店に入りたいのかもしれません。
    • ともかくお腹ペコペコなんでどこでもいい、と考えているかもしれません。

このような状況は、必ずといっていいほど発生します。観光では予期せぬことが多々発生するものです。

もしもそのようなタイミングで「一番近いレストランはここです!」という通知を受け取ったとき、食べたい・座りたい・休みたいというニーズとマッチします。そして、そのニーズにマッチした人は来店してくれと思います。

そしてこれはレストランに限った話ではありません。喫茶店でもいいし、その地域の珍品の販売店でもいいです。

歩いている人に「近くに◯◯がありますよ」というアピールをすることは、新しい行動を生じさせるきっかけとして有効だと考えます。

距離セグメントの有効性

ところで、距離が近いというセグメントは有効なのでしょうか?

距離が近いというセグメントは、決して安易な発想ではなく、日常でも普通に存在するものです。

<お店の立場>

街中では、早朝あるいはランチ前に、飲食店が自店の看板を大通りに運んでいるシーンが見受けられます。

その看板は「角を曲がってすぐです!」など、近さをアピールしているケースが大半です。

これは「近隣を歩いている人に自分のお店の広告を出す」という仕掛けです。近さを主眼にアピールしているものです。

ランチ激戦区の東京でもよくみる光景です。

そのお店の周りには、ネットで有名なお店もあるかもしれません。

そのようなライバル店に対し、その看板の付近を通りかかった人の獲得について、弱者のお店が戦いを挑んでいるわけです。「近さ」という視点に立って。

<お客さんの立場>

これをお客さんの立場で考えてみます。

たとえばみなさんが、お客様の会社を訪問したあとでランチを食べるときのことを想像してみます。

ネットで検索するかもしれませんが、実際に外を歩いているときに「すぐそこです!」というたぐいの看板を見つけたら、そのお店に入る人は多いと思います。

このときには、「有名かどうか?」「ネットでの評判は?」などを考えることはほぼ皆無で、「近いならいってみよう!」と考えてそのお店に来店すると思います。

距離が、知名度やブランドを凌駕する瞬間です。

このように「店の立場」「客の立場」いずれの立場からでも、この距離というセグメントは有効だと考えます。

マーケティング戦略

ビジネス戦略は、会社の戦略の中で上位に位置するものです。その下に、IT戦略やマーケティング戦略があります。

上記の「距離というセグメント」をマーケティング戦略で考えるとどうなるのでしょうか?

AIDMAモデル

マーケティングにはAIDMAモデルがあります。有名なモデルなので、多くのビジネスマンがマーケターか否かを問わず知っているものだと思います。

距離セグメントを、AIDMAで説明できるのでしょうか?

結論を言うと、これは無理そうです。

そもそもこのAIDMAには、「来店」というプロセスが含まれていません。その理由は、AIDMAは「商品」に関するマーケティング手法だからです。消費者がどこかのお店に入ったときに、その商品を思い出し購入してもらうためのモデルです。

看板を元に訪問するお店については、店の名前すら覚えていない場合も多いと思います。そのような行動をこのAIDMAでは説明できません。

ARASLモデル

しかしAIDMAとは別のモデルがあります。それはARASLモデルというものです。

このモデルは近距離にいる人を自分の店に導くためのマーケティング手法です。近くにいる人を呼ぶという、ある意味直感的なマーケティングの方法です。

「近隣を実際に歩いている人」というのは、オフラインビジネスのお店にとっては、格好のターゲットです。家でネットで自分のお店を検索をしている多くの人よりも、現場の近くにいる少数あるいは一人の人の方が、より重要なターゲットです。数ではありません。

そのターゲットを自分の店舗に導くための広告手法です。

ARASLモデルにおける人々の誘導

ARASLモデルで最も難しいことは、自分の店の近くに人々を誘導することです。

ここで最初に説明した、最短距離一筆書きルート、の登場です。

一筆書きルートを表示することにより、迷わないルートを作れば、それに沿って歩いてくれる観光客は存在すると考えます。

誘導したターゲットによる認識

近くへの誘導が成功しても、お店の存在を認識してもらえなければ意味がありません。

先の看板の事例で示したように、「近くにある」という事実に気がついてもらったときに初めてその効果を発揮します。気づかれなければ素通りです。

また仮に自分のお店よりもそのターゲットに近いお店があったとしても、その相手のお店のことが認識されなければライバルではありません。

それゆえに、認識させるプロセスも極めて重要です。

いわゆる地図が読めない人は、観光をしている際に、地図のチェックは欠かせません。地図画面を、視界の範囲に入れて街歩きをすることが多いです。

そのときに、その地図上に「近いですよ!」というメッセージ(ポップアップ)を出せば、そのメッセージを見てくれる可能性は高いと考えます。

スマホへのプッシュ通知では、オフにされている場合もありますが、地図上に出す通知ならばオフにされる心配はありません。

距離セグメントの実現

上記の誘導と認識によって、

  • ターゲットを自分のお店の近くに誘導する
  • 自分のお店が近くにあるとターゲットに認識させる

という状態を作り上げたことになります。

すなわち「自分のお店がそのターゲットにとって一番近い」というセグメントを実現させたということになります。

これが観光地内の無名店が、観光客の来店という目的のために、同地域の有名店に勝利するための戦略です。